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高温超伝導テラヘルツ光源のレビュー論文が出版

掛谷准教授と物質材料研究機構の王華兵博士の共著による高温超伝導テラヘルツ光源に関するレビュー論文が出版されました。

Terahertz-wave emission from Bi2212 intrinsic Josephson junctions: a review on recent progress

Itsuhiro Kakeya and Huabing Wang

Published 16 May 2016© 2016 IOP Publishing Ltd
Superconductor Science and Technology, Volume 29, Number 7

本論文は、高温超伝導テラヘルツ光源の研究に関するここ数年の進捗(発振強度および発信周波数の上昇)のほか、積層ジョセフソン接合の同期メカニズムと発振特性制御の面から注目されている温度分布に注目して、これまでの研究成果をまとめました。

レビュー論文ですが、オリジナルの図もいくつかあり、とくに、高温超伝導テラヘルツ光源と半導体のテラヘルツ光源の動作範囲をまとめた図や、高温超伝導テラヘルツ光源の発信周波数上限がジョセフソン最大電流の平方根で与えられることを示唆する図はぜひ参考にしていただきたいところです。

Tb-Pvsf

感謝:国際学会が無事終了しました

11月30日から12月3日まで実施した国際学会THz-plasma2014の主催を無事終えることができました。各国からお越し頂いた皆さん、奴隷のように働いてくれた研究室の学生さん、アルバイトに参加してくださった京大の学生さんに感謝します。また、支援くださった財団、学会、企業の皆様に感謝申し上げます。

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この集合写真はエクスカーションの前で、ちょっと寒かったですが天候も良く、皆さん最高の笑顔です。

BOMEM DA3

遠赤外分光器Bomem DA3(カナダ製)を廃棄することになりました。

高温超伝導発見直後の1989年ごろに購入した装置で、きわめて高分解能(0.3 GHz)のFTIR装置です。

国内にもまだ使用している研究室がありそうなので、パーツとして役立てないかと思い、取り扱いの業者に連絡したところ、引き取りたいとの連絡を頂きました。

遠赤外の天文関係の研究室とか、テラヘルツ光源を開発している研究室ではまだ使用されているそうです。

我々も、テラヘルツの研究を始めたときに使用することを検討しましたが、光源の水銀ランプが頭上の高い位置にあるので、クライオスタットを使う高温超伝導テラヘルツ光源への使用は断念しました。。

スキャンチューブを含めて、ほとんどのパーツを引き取って頂けるようで、ちょっといい事をした気分です。

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作業終了後の筐体。がらんどうです。
IMG_1341[1]スキャンチューブ

 

第3回酸化物セミナーに参加

京都大学桂キャンパスで開催された「第3回酸化物セミナー」において、本研究室D1の野村が、「固有ジョセフソン接合内のCuO2層の違いによる相互作用の影響」という題目で講演を行いました。

本セミナーは工学研究科から藤田静雄研究室、田中勝久研究室、人間環境学研究科から田部勢津久研究室との合同セミナーとして、約半年に1度のペースで開催しています。今回は新たに、工学研究科の陰山洋研究室が加わりました。今後も本学における酸化物研究のサロンとして発展に努めてゆきます。

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阪大理学研究科附属先端強磁場科学研究センター開所式に出席(掛谷)

5月20 日、大阪大学豊中キャンパスで行われた、大阪大学理学研究科附属先端強磁場科学研究センター開所式に出席しました。

予定としては、除幕式・内覧会に引き続き、記念式典・記念講演会が執り行われました。

記念講演会は
伊達宗行 大阪大学名誉教授 「磁石の歴史」
大貫惇睦 大阪大学名誉教授 「強磁場を使った重い電子系の物理」
金道浩一 東京大学物性研究所教授 「強磁場コラボラトリー計画について」
という豪華ラインナップ。非常にレアな講演が聴けると期待しておりました。

私は3限の講義が終わった後、急いで豊中に向かったのですが、記念講演会は、大貫先生の講演に入っており、伊達先生の講演は残念ながら拝聴できませんでした。

伊達先生の後に講座を担当された大貫先生は、f電子系化合物を舞台とした重い電子系の物性研究にどのように強磁場が貢献してきたか、を中心に講演されました。私が学生の時に拝見したスライドから、ごく最近の町田洋氏(私の筑波大時代の学生)の結果まで言及されており、衰えない好奇心を感じました。

そして、トリは私の学生時代のボス、金道先生です。
伊達研が牽引した強磁場研究の黎明期から、2000年前後に日本の強磁場研究が置かれた情勢、そこから現在日本の強磁場研究が目指している姿について講演されました。
特に、伊達先生阪大退職から金道先生教授昇任までの窮状については、その時期の一部を過ごした私にとって強い感慨を持ちました。

なお、すべての講演は後日、大阪大学オープンコースウェアにアップされるそうです。

さて、その後祝賀会が開かれました。
そこでは、非常に懐かしい方々にお会いすることができました。
8年ぶりにお会いする伊達先生は、ほとんど変わられていないのに、驚きました。
博士論文で主査を務めて頂いた都福仁先生は、つくばにいらしたときとき以来で、これも8年ぶりにお会いすることができました。
また、修士論文の時に共同研究させて頂いていた掛下知行先生は工学研究科長になられており、相変わらずのエネルギッシュな感じでした。
そのほか、各所でお世話になった先生方、先輩方にお会いすることができたほか、物理学科で教授になっている元同級生のT君と何十年か振りでゆっくり話をすることができました。どこもいろいろ大変みたいですね。

祝賀会の後は、石橋の居酒屋で伊達研の同窓会が執り行われました。卒業生として出席させて頂き、多くの人と話して、楽しい時間を過ごすことができました。

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阪大豊中キャンパスの「大学会館」入口。我々の在学時には「イ号館」として知られていました。

 

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大学会館の講堂内部。線形代数の講義を受けたり、学祭で人間ポンプの大道芸を見たことを思い出しました。

 

 

集積機能工学セミナー(浅井栄大氏)

浅井栄大博士(産総研)をお招きして集積機能工学セミナーを開催しました。

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超伝導量子メタマテリアルの電磁場応答理論

浅井 栄大

産業技術総合研究所 電子光技術研究部門

近年、新たな電磁波制御技術としてメタマテリアル[1]に大きな注目が集められている。メタマテリアルは、対象とする電磁波の波長に比べて十分小さな「人工原子」と呼ばれる微小構造体から構成される人工物質で、人工原子の形状や配置によって誘電率や透磁率を自在に制御する事ができる。しかし、従来のメタマテリアルは古典電磁気学の限界を超えた電磁波制御を行う事が出来ない。それに対し、近年人工量子二準位系(量子ビット)を人工原子とする量子メタマテリアル(QMM:Quantum MetaMaterial)が大きな注目を集めている[2,3]。QMM においては、量子状態の重ね合わせ状態や量子もつれ状態を利用する事で、古典メタマテリアルでは達成できない新奇な電磁場制御の発現が期待できる。また、最近になってドイツのグループが超伝導回路QEDを用いた量子メタマテリアルの実現に成功した[4]。

本セミナーにおいては、超伝導量子ビットから構成されるQMMの電磁波応答に関する我々の研究について紹介を行う。数値シミュレーションの結果、QMMは量子ビットの状態に依存して極めて多彩な電磁場応答を示すことが明らかになった。講演では、レーザー発振、磁場下で生じる量子渦状態及び「人工超伝導体」の発現について紹介する[5]。

[1] 北野正雄, 応用物理 78, 503 (2009)

[2] A. Rakhmanov et al., Phys. Rev. B 79, 184504 (2009)

[3] A. Shvetsov et al., Phys. Rev. B 87, 235410 (2013)

[4] P. Macha et al., arXiv:1309.5268

[5] H. Asai, S. Kawabata, S. Savel’ev, and A. Zagoskin, in preparation.

(文責 辻本)