3He冷凍機

概要

固有ジョセフソン接合におけるMQTの測定を行うために、2009年前半に3He測定を立ち上げた。

装置の構成

プローブ

サンプルステージ、測定信号系、3Heを導入するラインと凝縮させるポット、4Heと3Heの間の熱絶縁を保つ真空断熱層とその排気系などから成る。
掛谷が設計し、ジェック東理社に作製を依頼して納品(09/02)後、配線を行った。
ジェック東理社からの図面はこちら

  1. サンプルステージ
    銅丸棒からフライス盤で削りだした自作品。横から測定用のリード線が4本、下部にマイクロ波導入用の穴が空いている。
    t0.5の銅板をM2.0のネジで固定してノイズの侵入を防いでいる(つもり)。3HeポットにはM2.6のソケットネジで堅く固定し、さらに銀ペーストで埋めて熱接触を取っている。
    試料の裏側にRuOxセンサーを固定している(φ3の穴に挿入、銀ペーストで埋める)。
    RIMG0013
  2. 測定信号系
    Lakeshore社の極低温用ステンレス同軸ケーブルtype-SSを主に用いている(減衰率:40 dB/m@5GHz、抵抗4.3 Ω/m@293K、静電容量:95.14 pF/m@5kHz)。室温部からは断熱層排気ラインを通っており、断熱管内部では、自作パウダーフィルタもしくはπ型LCフィルタmini-circuit VLFX-80を用いている。
    温度測定はRuOxおよびCernoxセンサーを用いている。室温部で用いている100ミクロン銅線からの熱流入防止のため、1Kコールドプレートに巻き付けてGEワニスで固定した先を、100ミクロンマンガニン線10cmに繋いだのち、温度センサーに接続している。温度制御用のヒーターもコールドプレート付近でマンガニン線になっている。
    RIMG0015
  3. 3Heラインとポット
    ラインはSUS304製の薄肉(t0.3)管で、室温部はφ10、熱流入防止のため650mm下でクランクを加え、φ6に接続、φ18のバッファ管でφ4に繋ぎ、コールドプレートを通ってポットに到る。
    ポットの内容積は7.6ccであるので、300K、1atmで4Lの3Heガスが凝縮される。
    line-pot
  4. 真空断熱層と排気系
    予冷時は外側の4Heと熱交換を行い、最低温度を得たいときには断熱させるのが重要である。Inワイヤーをフランジで潰すことにより気密を保ち、φ10のSUS管で排気する。室温付近で10torr程度の4Heを導入すれば、中に入れた活性炭が低温で4Heを吸着し、4K以下では良好な断熱が保たれて、0.4Kを下回ることができる。ポットが断熱管に触れてしまうと試料が冷えないので注意。
  5. 問題点
    最低到達温度は0.36 Kと悪くないが、10K付近以上の温度制御が困難である。外側の4Heとの断熱が良くてクーリングパワーが低いと見られ、PID制御では一旦オーバーシュートした温度がなかなか下がらない。その割には高温での4Heの蒸発が早いのが良くわからない。周りの4Heの温度制御を行うのが最も効果的な方法となる気がする。
    追記:ガラスデュワを再真空引きしたら、ヘリウムの蒸発は遅くなりました。ガラスデュワの断熱不良によるものだったようです。4K以上で侵入していたガス分子が脱離するためです。

3Heハンドリング

高価な3Heガスをクライオスタットに導入したり、液化された3Heを減圧して1K未満の温度を得る。
Handling1   Handling2

  1. 3Heタンク
    12LのLPガスボンベをカインドガスから貰い、バルブを抜いて(人力では無理であったので、やはりカインドガスにお願いした)スエジロックの適当なテーパネジでSUS管に繋いでいる。購入した10Lの3Heガスのうち、6割少しが入っているはず。リークテストではネック付近で検出限界の10-9 Pa/min位のリークがあったが、10ヶ月経った現在のところ漏れはわからない。
  2. 気密パルブ
    スピンドル部(回転するところ)がベローズで覆われてリークすることのないバルブを使用している。主にSwagelokの1/4インチ用であるが、流量が必要な3He減圧メインバルブおよび外部接続パルブにはVATの1インチものを使用している。必要のないパルブは閉じることが重要。
  3. LN2トラップ
    液化する3Heから不純物(主にオイルミスト)を取り除くために、LN2で冷やされた活性炭とモレキュラーシープを通す。時々加熱して排気するというクリーニングが必要らしいが、やったことがない。
  4. 気密型ロータリーポンプ
    Adixen Pascal 2015-H1を使用している。オイル交換の際には活性炭を用いて3Heを回収するツールが必要だが、まだ作製していない。

デュワ

Oxfordの12Tマグネットに上記のプローブを挿入して使用することを計画して設計したが現時点ではガラスデュワのみでの使用である。

内デュワは外径95 mm、内径75 mm、全長1100 mmの寸胴型。
幕張理化学硝子製作所で作成・真空再排気.再排気直後の内デュワを用いると,4Heがコールドプレートより上のレベルに16時間程度保持される.(2010/07/03)

4Heポンピングライン

Oxfordの12Tマグネット用のポンピングライン。Edwards製。

冷却手順

試料設置、温度センサー・ヒーター等導通確認

試料をポットに取り付けたステージに固定し、導通を取る。
温度センサー、ヒータ等の抵抗値を概ねの値で確認する。

試料抵抗測定確認、温度表示確認

温度センサーと温度コントローラを接続し、295 K前後の値が表示されることを確認する。

断熱管取り付け、真空引き

$\phi$0.5 mmのインジウム線を9cm取り、断熱管のシール部に合わせて円環状に整形する。この際、インジウム線は5mm程余る。
接続部では鋭利なカッターナイフで斜めに切断し、なるべく面積の広い切断面(粘着性がある)で接続する。シール部に付いている古いインジウムは竹串などで除去する。この際、銅製のフランジに傷を付けないように注意する。
シール部の傷はリークの原因になる。

12本のソケットねじでフランジを均等に締める。インジウム線が均等に潰れるように締めていく。六角レンチのボール部だけでなく、六角部をきちんとソケットに入れて締めていく。
入れ方が不十分だと、使用しているとソケットをなめてしまうので、注意が必要。

真空排気して、インジウムシールの気密性を確認する。真空度の目安としては、$10^{-5}$ Torr.

熱交換用$^4$Heリーク

真空排気した断熱層に予冷熱交換用の4Heを導入する。10 Torr程度になるようにするが、ピラニ真空計はHeガスに対して応答が遅く、高い圧力を示すことに注意。

ガラスデュワにプローブ挿入

ウィルソンシールからプローブを挿入する。バッフル板を入り口に当てて配線を切断することの無いように注意する。

$^3$Heポット、ハンドリング真空引き

ハンドリングにポンプを接続し、3Heラインに侵入した空気を排気する。
通常、ポンプとハンドリング、ハンドリングとクライオスタットをつなぐベローズチューブがほとんどの体積を占める。

内側デュワにLN2充填

シリコンチューブとステンレスパイプを利用して液体窒素を内側(ヘリウム)デュワに充填する。

内側デュワからLN2追い出し、外デュワにLN2充填

内側デュワの底まで届くステンレスパイプを液体窒素導入口から差し込み、窒素ガスで加圧して液体窒素を外デュワに追い出す。
液体の放出が無くなれば、窒素ガスの圧力を上げて追い出しを完了させると共に、デュワ内に液体が無いことを目視で確認する。
外デュワがいっぱいになるまで液体窒素を加える。外デュワの液体窒素の量が内デュワの4He液面を下回ると、ヘリウム蒸発レートが高くなるので、
適宜液体窒素を追加する。
内デュワにヘリウムボンベからヘリウムガスを導入し、窒素ガスを置換する。ヘリウム回収口からヘリウムガスを加え、
デュワ最下部に開口している追い出し用のチューブからヘリウムガスの放出が確認できれば、置換が完了したことになる。

$^4$Heトランスファー

ヘリウムベッセルから液体ヘリウムをトランスファーする。

  1. トランスファーチューブの長い方の端をヘリウムベッセルに挿入。
    ヘリウムガス圧力の上昇により、チューブの反対側からヘリウムガスが出てくるのを確認する。
  2. クライオスタットに挿入し、トランスファーチューブのベローズ部がなるべく曲がらないように、両側をゆっくり下降させ、なるべく下までトランスファーチューブを下げていく。
    このとき、ベッセルの圧力が0.1 barを超えないように注意する。
  3. ボンベで圧力を加え、液体ヘリウムを送っていくと、はじめはすべて蒸発するが、やがて蒸発量が少なくなり、液体が溜まっていく。
  4. 電灯などを用いて液面を確認し、必要な高さになったら。圧力をゆっくり下げて、トランスファーを終了する。
    ベッセル側の圧力を急激に下げると、クライオスタット側の圧力差により液体ヘリウムが逆流することがあるので注意。
  5. トランスファーチューブを上げていき、クライオスタット側、ベッセル側の順に抜く。

$^4$Heポンピング

内デュワ内を減圧し、4Heの沸点を下げて3Heを液化する。
クライオスタットの気密を確認した後、Edwardsの大型ロータリーポンプを起動させ、4Heハンドリングのメインバルブをゆっくり開ける。
500 mbar程度まではポンプの負荷が高いので、ゆっくり減圧させる。

$^3$He導入、液化

ハンドリングを操作して3Heをクライオスタットに導入し、4Heによって液化させる。
導入開始時の3Heポットの温度が10 K未満の時、液化開始までは1時間程度。
2.3 K程度まで温度が急激に減少し、その後ゆっくり減少する。
液化完了時の温度は2.2 K前後、バラトロンの圧力表示は330 mbar程度。

$^3$Heポンピング

ロータリーポンプを起動させて、ハンドリングを操作し、3Heを減圧する。まず、1/4インチのバイパスを開け、1Kまで温度を下げる。
次に1インチのメインバルブを開ける。

測定

温度を安定させて、測定を行う。

  • 0.7 K以下:メインバルブを全開にして、ヒーターで温度制御を行う。
  • 0.7 – 1.0 K:メインバルブを閉じながら、ヒーターで温度制御
  • 1.0-2.5 K:メインバルブを閉じてバイパスの流量とヒーターで温度制御
  • 2.0-10 K:ポットの3Heをタンクから切り離し,少ないガス量で液化とヒーターのバランスさせて温度制御 ログ
  • 10 K以上:4Heとの熱接触とヒータのバランスで温度制御.熱交換4Heガスは数十mbar ログ

3He気化・回収

測定が終了したら、メインバルブを全開、目標温度を40 K程度にして3Heガスを回収する。

$^4$He気化・回収

ガラスデュワ内N2ガス置換

ガラスデュワ内に温度の高いヘリウムガスを残しておくと、真空層にヘリウム原子が侵入し、デュワの断熱性を劣化させる。
測定が終了しデュワ内に液体ヘリウムが残っていない場合(完全に蒸発させた後)、液体窒素を溜まらない程度に注ぎ、ヘリウムガスを追い出す。
液体窒素を注いだ後は、逆止弁をつけて、空気が侵入しないようにする。

Tips

4He熱交換ガスの量について

 

日付 ガス圧 (Torr) 4He充填時の温度 3He液化までの時間 到達温度 チャコール位置  備考
09/05/26  10 13  1:00  0.36  3He pot
09/07/17  20 54  1:50  –  –
09/07/28  29 13  1:50(3He導入忘れ) 0.46
09/08/27  1 33  1:00 0.385 断熱管底
09/10/07  1 68  2:00 0.4
10/03/09  1? 31  1:00 0.37
10/03/10  1 72  3:10 0.38 断熱管底
10/07/02  10 12  1:30 0.36 3He pot
11/08/25  12 (air?)  4.3  0:10 0.455 ピラニと4Heガスバック位置変更
11/09/07  10  64  2:00 0.63 3 hours to reach at 2.4K
11/11/15  14 (mbar) 10  6:00  0.45  3He pot
11/11/22  14(mbar) 11  1:50 0.45  3He pot
 12/05/11  12 mba  4.5

 

PID parameters (2-10 K)

Date Temperature [K] P I D 3He pressure [mbar]
2010/04/08 4.0 0.1 200 50 370
2010/04/08 3.5 0.1 100 25 370
2011/09/08 7.0 0.1 200 50 370
2011/11/15 2.0 0.001 24 6 198
2011/11/15 4.0 – 7.0 0.001 24 6 270
2011/011/22  2.0 0.01  24 6  159
2011/11/22  5.5 – 7.0 0.01  24 6  500

 

温度制御(10K-)断熱管の4Heガス調整

Date Setpoint [K] P I D 4He pressure @RT
 2011/11/23  20  0.66 56.2  8.02