「#論文出版」カテゴリーアーカイブ

鉛系銅酸化物の90 K級高温超伝導に関する論文が出版

本研究では、これまでに超伝導特性の詳細が明らかにされていなかったPb系銅酸化物が90 K級の高温超伝導を示すことが良質なエピタキシャル薄膜の評価によって明らかになりました。

90K superconductivity of clean Pb1212
epitaxial films

S. Komori, A. Kondo, K. Kindo, and I. Kakeya
Superconductor Science and Technology, 29, 085007 (2016).
DOI:10.1088/0953-2048/29/8/085007

90 KのPb系高温超伝導薄膜に対して原子像の観察をはじめとした結晶性の評価からパルス強磁場中での超伝導特性の変化に至るまで種々の測定を行い、基礎的性質を明らかにするとともに、現在超伝導線材応用がすすめられている90 K級のイットリウム系高温超伝導体との電気特性の比較検討も行いました。

 

Pb系銅酸化物超伝導体における超伝導の「泡」に関する論文を出版

私たちの研究室で初めて単結晶膜の育成に成功したPb1212超伝導体について、テラヘルツ伝導度測定を行い、超伝導揺らぎの存在を示す結果を超伝導研究の専門誌、Physica Cに発表しました。

Terahertz conductivity in the under-doped Pb1−ySr2Y1−xCaxCu2+yO7+δ epitaxial film

Akira Uzawa, Sachio Komori, Yuta Kamei, Itsuhiro Kakeya

Available online 18 May 2016

本論文では、テラヘルツ時間領域分光法を用いて、Pb1212エピタキシャル膜のab面内交流伝導度を観測しました。
その結果、直流抵抗が減少し始める超伝導転移の開始よりも高い温度でも、超流体(超伝導を担う成分)が短い時間存在する超伝導揺らぎが観測されることがわかりました。
この結果は、新しい超伝導体であるPb1212をYBCOに替わる超伝導線の材料として検討していくのに不可欠な知見となります。

楕円偏光テラヘルツ波の発振についての論文が出版

Physics Procedia誌に、高温超伝導体メサ構造から楕円偏光のテラヘルツ波を発振させる提案についての論文が出版されています。

Polarization Enhancement of Terahertz Radiation Generated by Intrinsic Josephson Junctions in a Truncated Edge Square Bi2Sr2CaCu2O8+δ Mesa 

A. Elarabi, ,Y. YoshiokaM. TsujimotoY. NakagawaI. Kakeya

本論文では、正方形の対向する2角を落とした六角形のメサ構造から発振されるテラヘルツ波を円偏光にするデザインについて提案しています。

円偏光の電波は、感度がアンテナの向きに依存しないので、携帯電話や衝突防止レーダーなど遠隔通信に利用されています。

円偏光のテラヘルツ波は、現在の1000倍に及ぶ情報密度の近距離非接触データ転送や、化学物質のキラル異性体(鏡像対称性)の分別への応用が期待されています。

これまで、テラヘルツ波を円偏光にするためには、1/4波長板などの光学素子を用いていましたが、本技術によって、簡便なセットアップで円偏光が発振できるだけでなく、円偏光を維持して周波数をチューニングできることが可能になりました。

 

高温超伝導テラヘルツ光源のレビュー論文が出版

掛谷准教授と物質材料研究機構の王華兵博士の共著による高温超伝導テラヘルツ光源に関するレビュー論文が出版されました。

Terahertz-wave emission from Bi2212 intrinsic Josephson junctions: a review on recent progress

Itsuhiro Kakeya and Huabing Wang

Published 16 May 2016© 2016 IOP Publishing Ltd
Superconductor Science and Technology, Volume 29, Number 7

本論文は、高温超伝導テラヘルツ光源の研究に関するここ数年の進捗(発振強度および発信周波数の上昇)のほか、積層ジョセフソン接合の同期メカニズムと発振特性制御の面から注目されている温度分布に注目して、これまでの研究成果をまとめました。

レビュー論文ですが、オリジナルの図もいくつかあり、とくに、高温超伝導テラヘルツ光源と半導体のテラヘルツ光源の動作範囲をまとめた図や、高温超伝導テラヘルツ光源の発信周波数上限がジョセフソン最大電流の平方根で与えられることを示唆する図はぜひ参考にしていただきたいところです。

Tb-Pvsf

Optics Express誌に論文掲載

本研究室の新しい論文が米国光学会(Optical Society of America)出版局のOptics Express誌に掲載されました。

本研究では高温超伝導体を使った小型テラヘルツ光源における空洞共振効果について、矩形メサ構造の短辺および長辺方向それぞれの横磁場モードの観測に成功しました。この成果により、十分なコンセンサスが得られていなかった従来の議論をようやく結論に導くことができました。モード同定を正確に行うための新しい実験系を構築し、電磁界シミュレータを使った数値解析を取り入れることで測定結果を詳細に解析しました。単一素子で横磁場モードを自在に制御できることは、広帯域発振器の開発や偏波制御素子の実現といった応用につながります。

M. Tsujimoto, I. Kakeya, T. Kashiwagi, H. Minami, and K. Kadowaki
“Cavity mode identification for coherent terahertz emission from high-Tc superconductors”

DOI: http://dx.doi.org/10.1364/OE.24.004591

Supercond. Sci. Technol.誌に論文掲載

本研究室の新しい論文が英国物理学会(IOP)出版局のSuperconductor Science and Technology誌に掲載されました。

私たちは超伝導テラヘルツ光源の材料である高温超伝導体の元素置換効果に着目しています。本論文では、これまで使われてきたビスマス系高温超伝導体のビスマス(Bi)元素の一部を鉛(Pb)で置換した素子を作製し、テラヘルツ分光測定などによって明らかになったPb置換効果について報告しました。Pb置換素子では発振の高周波化が期待できます。また、Pb置換によって大型単結晶の育成が容易となることは工業的に重要です。

超伝導テラヘルツ光源の実現をめざした化学的アプローチは本研究室のオリジナルな研究手法です。今後の成果にもご期待ください。

M. Tsujimoto, Y. Maeda, H. Kambara, A. Elarabi, Y. Yoshioka, Y. Nakagawa, Y. Wen, T. Doi, H. Saito and I. Kakeya
“Terahertz emission from a stack of intrinsic Josephson junctions in Pb-doped Bi2Sr2CaCu2O8+δ

DOI: http://dx.doi.org/10.1088/0953-2048/28/10/105015

(文責 辻本)