高温超伝導体を用いたテラヘルツ発振デバイスで周波数変調に成功した結果がNature Photonicsに掲載されました。
Masashi Miyamoto , Ryota Kobayashi , Genki Kuwano , Manabu Tsujimoto & Itsuhiro Kakeya , Nature Photonics (2024)
併せて京都大学からプレスリリースを出しました。
電子工学専攻の掛谷一弘准教授、宮本将志修士課程院生ら、産業技術総合研究所量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターの辻本学主任研究員らの研究グループは、ビスマス系高温超伝導体を用いた超伝導テラヘルツ光源からエフエム(周波数数変調)電磁波の空間への放射を実現しました。
空間を飛ぶ電波・光を用いて大量のデータをやりとりする高速無線通信の要望が、コロナ禍を経てますます高まっています。その世界的な需要に対応するために、さらに進化した無線ネットワーク、Beyond 5G/6G技術の開発が急ピッチで進んでいます。こうした無線通信に必要な電磁波の周波数帯であるテラヘルツ帯の光源のひとつとして、超伝導テラヘルツ光源が研究されています。本研究グループは、超伝導だけが持つ性質であるジョセフソン効果を利用することで、市販の信号発生器から発生する3ギガヘルツのマイクロ波信号をテラヘルツ波に乗せて送信する、テラヘルツ波エフエム技術の開発に成功しました。実験の結果、現行の光ファイバーインターネットサービスの100分の1以下の時間で4K動画などの大きなデータを、無線で送れる能力を持つことが示されました。
本成果は、2024年1月10日に英国の国際科学学術雑誌Nature Photonics 誌にオンライン公開されました。
マイナビニュースに掲載されました(2024/1/15)京大、61GBを3.8秒で送信するFM方式での高速テラヘルツ波送信に成功
日本経済新聞に掲載されました8K映像の即時伝送も 京大など、高周波を超電導体で送信(2024/1/18) 8K映像を即時送信する技術(2024/1/19)
電子情報通信学会英文誌IEICE Transactions Onlineで、掛谷准教授による高温超伝導体における固有ジョセフソン接合に関する招待論文が2023年6月の出版に先立ちオンライン公開されました。
https://search.ieice.org/bin/summary_advpub.php?id=2022SEI0004&category=C&lang=E&abst=
オープンアクセスとなっておりますので、誰でも読むことができます。
物質材料研究機構の齋藤嘉人氏、高野義彦MANA主任研究者との共同研究で針状(ウィスカー)超伝導結晶を用いたテラヘルツ発振デバイスに関する論文がApplied Physics Letters誌のEditors’ pick(編集部おススメ)として掲載されました。
Polarization analysis of terahertz emission from Bi-2212 cross-whisker intrinsic Josephson junction devices and their refractive index
Appl. Phys. Lett. 121 , 212601 (2022); https://doi.org/10.1063/5.0123290
Y. Saito, I. Kakeya, and Y. Takano
今回、私たちは短時間で育成できるビスマス系高温超伝導ウィスカー結晶を用いたテラヘルツ発振デバイスの開発に成功しました。超伝導テラヘルツ光源にはこれまで平板状単結晶が用いられてきましたが、ウィスカー結晶を用いることにより、素子作製時間の短縮と多機能化が見込まれ、研究開発の加速が期待できます。
本成果については、京都大学よりプレスリリースもされておりますので、そちらも参照ください。
超伝導針状結晶からのテラヘルツ波放射に成功ー超伝導テラヘルツ光源の機能開発を加速ー
American Institute of Physicsの英文速報誌Applied Physics Letters (APL)に投稿していたウィスカー結晶高温超伝導ジョセフソンプラズマ光源の放射特性とその数値計算を報告した、物質材料研究機構のグループとの共著論文が受理されました。
本研究室は、測定系の構築、数値計算を含む測定結果の解析、論文の執筆において重要な貢献を果たしております。
arxivにアップロードしているプレプリントはこちら 。
応用物理学会の英文速報誌Applied Physics Express (APEX)から高温超伝導ジョセフソンプラズマ光源の回路モデルとその数値計算に関する論文が出版されました。
Ryota Kobayashi1 , Ken Hayama1 and Itsuhiro Kakeya1
Published 17 August 2022 • © 2022 The Japan Society of Applied PhysicsApplied Physics Express , Volume 15 , Number 9
本論文では、単独素子発振と2素子直列・並列接続の回路モデルを提案し、実験結果から回路パラメータを決めて2素子同期発振を記述しました。 同期発振に関して実験値に合わせこむ計算としては、新しい試みです。特に興味深い点としては、パッチアンテナの共振周波数と放射極大の周波数が一致しないことであり、ジョセフソンプラズマ光源の特徴として知られている広帯域発振の謎を解くカギになりそうです。
高温超伝導体Bi2212単結晶から作成されたテラヘルツ放射デバイスについての論文がPhysical Review Applied誌から発表されました。本論文は、現M2の小林亮太、元修士課程院生の巴山顕が中心となって進めた実験の成果を産業技術総合研究所の辻本学博士と共にまとめたものです。
本論文では、放射テラヘルツ波の偏光測定結果について線形代数を用いた解析を行うことにより、同期する二つの素子からの放射電磁波の位相差が周波数に応じて変わっていくことを示しています。本論文で得られた成果をもとに系統的に調査を進めていくことにより、Beyond 5Gに求められる超高速通信のキャリア光源として有用なテラヘルツ電磁波を放射する超伝導デバイスが実現可能になります。
Ryota Kobayashi, Ken Hayama, Shuma Fujita, Manabu Tsujimoto, and Itsuhiro Kakeya Phys. Rev. Applied 17 , 054043 – Published 25 May 2022
高温超伝導体Bi2212ウィスカー(針状)結晶から作製された固有ジョセフソン接合デバイスからのテラヘルツ発振に関する、物質材料研究機構などとの共同研究論文が、2月11日付けで応用物理学会の速報誌Applied Physics Express (APEX)誌に掲載されました。共著者に当研究室の修士課程院生である巴山顕、元院生である藤田秀眞も含まれています。
これまでに当研究室などで進めてきたバルク単結晶を基にしたデバイスとは異なり、ウィスカー結晶を用いた場合、その固有の形状から微細加工が不要となったり、アンテナとして機能するため、テラヘルツ光源の機能性を高めることが期待されます。
Yoshito Saito1,2 , Shintaro Adachi1 , Ryo Matsumoto3 , Masanori Nagao4 , Shuma Fujita5 , Ken Hayama5 , Kensei Terashima1 , Hiroyuki Takeya1 , Itsuhiro Kakeya5 and Yoshihiko Takano1,2
Published 11 February 2021 • © 2021 The Japan Society of Applied Physics
当研究室が初めてエピタキシャル膜の成長に成功した銅酸化物超伝導(Pb,Cu)Sr2 (Y,Ca)Cu2 O7 (Pb1212)のc軸固有ジョセフソン特性について報告した論文が日本物理学会の学術誌、Journal of Physical Society of Japanに掲載されました。
本論文は、当研究室の小森祥央元博士課程院生(現ケンブリッジ大学研究員)が博士課程在学時に進めた実験を再解析して執筆した成果です。
Interlayer Transport and Josephson Coupling in a 1212-type Cuprate Superconductor with a (Pb,Cu)–O Barrier Layer
A quasi-two-dimensional electron system resulting from a layered crystal structure is a common feature of high-temperature superconductors. In such a system, an interlayer Josephson coupling is responsible for bulk superconductivity. However, materials of interest are limited for Bi-based cuprates which have underdamped and systematically controllable interlayer Josephson junctions. Here, we report the c -axis transport properties and an interlayer Josephson coupling of a 1212-type cuprate superconductor which have not been well studied so far. We demonstrate an underdamped Josephson coupling between superconducting CuO2 double-layers through a chemically controllable (Pb,Cu)–O barrier layer. Broadly tunable Josephson properties through a chemical substitution demonstrated in this work in conjunction with a rich variety of barrier layers for 1212-type cuprates can potentially offer a material breakthrough in the research field of intrinsic Josephson junctions.
高温超伝導テラヘルツ光源の同期発振現象に関する筑波大学、パリ高等師範学校(ENS)との共同研究の成果がPhysical Review Applied誌のLetterセクションに掲載され、Editors’ Suggestionとして注目論文に採用されました。
Mutually Synchronized Macroscopic Josephson Oscillations Demonstrated by Polarization Analysis of Superconducting Terahertz Emitters
M. Tsujimoto, S. Fujita, G. Kuwano, K. Maeda, A. Elarabi, J. Hawecker, J. Tignon, J. Mangeney, S.S. Dhillon, and I. Kakeya
Phys. Rev. Applied 13 , 051001 – Published 13 May 2020
本論文では、高温超伝導体単結晶上に作製したテラヘルツ光源から放射される電磁波の偏光(電磁波の偏り)について、素子構造のひとつから放射される場合とふたつから同時に放射される場合を比較して議論し、二つの素子構造におけるジョセフソン効果による電流振動が位相同期して強度の強い放射を実現していることを明示しています。
本研究の成果により、以下の波及効果が期待されます。
同期発振現象の解明による高強度テラヘルツ光源の実現
テラヘルツ量子通信光源への応用の可能性
本研究は、当研究室卒業生である藤田秀眞氏の修士論文(2019年2月提出)での実験結果に加え、筑波大辻本グループによる精密測定と解析を得て、辻本博士、掛谷准教授、Dhillion博士 (ENS)で論文を執筆しました。本研究の技術的な肝であるテラヘルツ光学素子の検証がENSグループとの共同研究です。
Physical Review Applied誌のLetterセクションはPhysical Review Lettersと同等の観点で査読されることから狭き門でしたが、幸いにも受理され、さらにはEditors’ Suggestionにも採用されました。今後は本成果を発展させる研究を進めていきます。
筑波大学と京都大学から共同プレスリリースが出されておりますので、そちらもご覧ください。
超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を初めて観測 -テラヘルツ量子通信デバイスの創成につながる新発見-
筑波大学プレスリリース
京都大学プレスリリース
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京都大学の超伝導・真空電子デバイスに関する研究室, Research group for superconducting and vaccum electronics in Kyoto Univ.