「#研究成果」カテゴリーアーカイブ

楕円偏光テラヘルツ波の発振についての論文が出版

Physics Procedia誌に、高温超伝導体メサ構造から楕円偏光のテラヘルツ波を発振させる提案についての論文が出版されています。

Polarization Enhancement of Terahertz Radiation Generated by Intrinsic Josephson Junctions in a Truncated Edge Square Bi2Sr2CaCu2O8+δ Mesa 

A. Elarabi, ,Y. YoshiokaM. TsujimotoY. NakagawaI. Kakeya

本論文では、正方形の対向する2角を落とした六角形のメサ構造から発振されるテラヘルツ波を円偏光にするデザインについて提案しています。

円偏光の電波は、感度がアンテナの向きに依存しないので、携帯電話や衝突防止レーダーなど遠隔通信に利用されています。

円偏光のテラヘルツ波は、現在の1000倍に及ぶ情報密度の近距離非接触データ転送や、化学物質のキラル異性体(鏡像対称性)の分別への応用が期待されています。

これまで、テラヘルツ波を円偏光にするためには、1/4波長板などの光学素子を用いていましたが、本技術によって、簡便なセットアップで円偏光が発振できるだけでなく、円偏光を維持して周波数をチューニングできることが可能になりました。

 

高温超伝導テラヘルツ光源のレビュー論文が出版

掛谷准教授と物質材料研究機構の王華兵博士の共著による高温超伝導テラヘルツ光源に関するレビュー論文が出版されました。

Terahertz-wave emission from Bi2212 intrinsic Josephson junctions: a review on recent progress

Itsuhiro Kakeya and Huabing Wang

Published 16 May 2016© 2016 IOP Publishing Ltd
Superconductor Science and Technology, Volume 29, Number 7

本論文は、高温超伝導テラヘルツ光源の研究に関するここ数年の進捗(発振強度および発信周波数の上昇)のほか、積層ジョセフソン接合の同期メカニズムと発振特性制御の面から注目されている温度分布に注目して、これまでの研究成果をまとめました。

レビュー論文ですが、オリジナルの図もいくつかあり、とくに、高温超伝導テラヘルツ光源と半導体のテラヘルツ光源の動作範囲をまとめた図や、高温超伝導テラヘルツ光源の発信周波数上限がジョセフソン最大電流の平方根で与えられることを示唆する図はぜひ参考にしていただきたいところです。

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スウェーデンでの超伝導デバイスに関する国際会議で招待講演

スウェーデンの北部、いわゆるラップランドのBijorkildenにおいて4月10日から17日まで行われた14th International workshop on High-frequency Superconducting Electronicsに掛谷(私)が参加し、
Generation of elliptically polarized terahertz waves from Bi2212
intrinsic Josephson junctions

の題目で招待講演を行いました。

関空からイスタンブール経由でスウェーデンの首都ストックホルムまで19時間、
ストックホルムから良質で知られるスウェーデン鋼の原料となる鉄鉱石の生産で有名なキルナまで飛行機で1時間半、
そこから列車でさらに2時間かけて、ようやく現地に到着しました。

会場は、フィヨルド地形に囲まれたツンドラの中にあるホテルで、ここにほぼ1週間カンヅメで会議が行われました。

セッションだけでなく、寝食を共にして多くの時間を参加者全員で共有するこのスタイルの会議は、その後非常に良い関係に発展させることが良くあり、大好きなやり方です。

今回も、3食を同じレストランで取るという型式で、日が経つにつれ、初対面であった参加者同士が一緒に食事をして、研究に関する議論を深めていきました。

単調な食事に飽きないわけではないですが、それにまして新しい仲間を作れるというのは、魅力的なことです。

私も、数多くの新しい友人を作って、新しい共同研究先を3件ほど見つけてきました。

主にヨーロッパの研究者たちと寝食を共にして、議論を深めて再会を約束しました。

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学会の参加者で作ったイグルー、もっともたくさん人が乗ったイグルーとして、ギネスブックに申請するそうな

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イグルーの向こうに広がるオーロラ。私は肉眼で見ることはできませんでした。

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スウェーデンでもっとも標高の高い場所にあるロッジへのエクスカーション。とはいえ、標高はわずか1,200メートル。

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ワークショップまとめのスライド。参加の日本人はわずか2名。

日本物理学会第71回年次大会で発表

東北学院大学で行われた日本物理学会第71回年次大会において、当研究室から2件の発表を行いました。

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超伝導自由度間相互作用に注目した多層固有ジョセフソン接合系におけるテラヘルツ発振と巨視的量子トンネル現象
掛谷一弘
京大院工
領域6

「固有ジョセフソン接合の最前線」シンポジウムにおける講演でした。固有ジョセフソン接合における第2スイッチ事象とPb1212超伝導体の固有ジョセフソン接合に関して、多数の質問がありました。

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Bi-2223固有ジョセフソン接合を使ったテラヘルツ発振の検証
辻本学, 斉藤寛, 土居卓司, 温一凡, Asem Elarabi, 掛谷一弘, 足立伸太郎A, 渡辺孝夫A
京大院工, 弘前大理工A
領域8

Bi2223からのテラヘルツ発振に関する世界で初めての報告で、大きな注目を集めました。
今学会では、共同研究先の発表で、共著になっているものを含めて、計3件の発表がありました。共同研究者の皆様、ご静聴頂いた皆様に感謝申し上げます。

応用物理学会春季学術講演会で発表

東京工業大学で行われた、応用物理学会春季学術講演会で以下の3件の発表を行いました。

〇野村 義樹1、岡本 陸1、神原 仁志1、掛谷 一弘1 (1.京大院工)

奨励賞にノミネートした講演で、出席者から電荷結合現象に関する活発な質問がでました

〇掛谷 一弘1、エララビ アセム1、温 一凡1、土居 卓司1、辻本 学1,2(1.京大院工、2.筑波大数理物質)

「高温超伝導発見30周年記念シンポジウム」における講演で、多数の聴衆を前に講演しました。出席者からは、円偏光発振について複数の質問がありました。

〇土居 卓司1、辻本 学2、Elarabi Asem1、温 一凡1、掛谷 一弘1(1.京大院工、2.筑波大学)

ポスター賞の最終選考(最後の2件)まで残り、多数の訪問を頂きました。ポスター賞は惜しくも逃がしましたが、良い経験になりました。

今学会では、共同研究先の発表で、共著になっているものを含めて、計4件の発表がありました。共同研究者の皆様、ご静聴頂いた皆様、ありがとうございました。

Optics Express誌に論文掲載

本研究室の新しい論文が米国光学会(Optical Society of America)出版局のOptics Express誌に掲載されました。

本研究では高温超伝導体を使った小型テラヘルツ光源における空洞共振効果について、矩形メサ構造の短辺および長辺方向それぞれの横磁場モードの観測に成功しました。この成果により、十分なコンセンサスが得られていなかった従来の議論をようやく結論に導くことができました。モード同定を正確に行うための新しい実験系を構築し、電磁界シミュレータを使った数値解析を取り入れることで測定結果を詳細に解析しました。単一素子で横磁場モードを自在に制御できることは、広帯域発振器の開発や偏波制御素子の実現といった応用につながります。

M. Tsujimoto, I. Kakeya, T. Kashiwagi, H. Minami, and K. Kadowaki
“Cavity mode identification for coherent terahertz emission from high-Tc superconductors”

DOI: http://dx.doi.org/10.1364/OE.24.004591

信貴賞

低温工学・超電導学会関西支部の「信貴賞」を辻本が受賞しました。この賞は、低温工学・超伝導若手合同講演会の講演者のうち、超伝導エレクトロニクス、低温・超伝導基礎物性、ナノテクノロジーによる低温工学・超伝導研究、低温デバイス開発、超伝導線材および超伝導マグネット開発、ならびにその応用分野で優秀な研究に取り組んでいる最優秀若手研究者を有識者が選定し、同分野を活気あふれるものとするために贈呈されるものです。

低温工学の発展に多大な貢献をされ2010年に亡くなられた大阪市立大学名誉教授の故・信貴豊一郎先生のお名前を冠した大変名誉ある賞です。

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写真は低温工学・超電導学会関西支部ホームページから転載

(文責:辻本)

第14回低温工学・超伝導若手合同講演会で講演

大阪市立大学文化交流センターで開催された第14回低温工学・超伝導若手合同講演会において、辻本が講演を行いました。

題目 著者 所属
高温超伝導体を使ったコヒーレントな連続テラヘルツ光源の開発
辻本学
京大院工

リンク: 低温工学・超電導学会関西支部ホームページ

(文責:辻本)

第23回渦糸物理国内会議で4件の発表

12月7日から9日に福岡県福岡市の休暇村志賀島で開催された第23回渦糸物理国内会議において、3件の口頭発表と1件のポスター発表を行いました。

【口頭】

題目 著者 所属
PbSr2(Ca,Y)Cu2O8における固有ジョセフソン特性とテラヘルツ時間領域分光法による超伝導揺らぎ
小森祥央
鵜沢旭
掛谷一弘
京大院工
Bi 系固有ジョセフソン接合における巨視的量子トンネル確率の層間結合効果
野村義樹
神原仁志
岡本陸
温一汎
掛谷一弘
京大院工
Bi-2212 固有ジョセフソン接合テラヘルツ発振におけるストライプ状微細発振構造に関する考察
辻本学
斉藤寛
土居卓司
温一凡
Asem Elarabi
掛谷一弘
京大院工

【ポスター】

題目 著者 所属
PbSr2(Ca,Y)Cu2O8における固有ジョセフソン特性とテラヘルツ時間領域分光法による超伝導揺らぎ
小森祥央
鵜沢旭
掛谷一弘
京大院工

リンク: 第23回渦糸物理国内会議サイト

(文責:辻本)

ISS2015で3件の発表

11月16-18日に東京、船堀ホールで行われた28th International Symposium on Superconductivity (ISS2015)で、野村、アセムが口頭講演、鵜沢がポスター発表を行いました。

Oral Presentations

Nov. 17
PC-19
 15:40-15:55
Decrease in MQT Rate for Second Switch in Bi2Sr2CuO6+δ Intrinsic Josephson Junctions
Yoshiki Nomura, Hitoshi Kambara, Yifan Wen, Itsuhiro Kakeya

Nov. 18
FD-12
 10:20-10:40
Generation of Elliptically Polarized Terahertz Waves using a High-Tc Superconducting Bi2Sr2CaCu2O8+δ.
A. Elarabi, Y. Yoshioka, M. Tsujimoto, Y. Nakagawa, I. Kakeya

Poster Presentation

PCP-13  
Superconducting Fluctuation in PbSr2Y1-xCaxCu2O7+δ Epitaxial Films Observed by Terahertz Time-Domain Spectroscopy
Akira Uzawa, Sachio Komori, Itsuhiro Kakeya