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記者説明 「超高速移動体通信を可能にするテラヘルツ光源の開発―モノリシック高温超伝導デバイスから円偏光電磁波の放射に成功―」

研究成果発表に関する記者説明
「超高速移動体通信を可能にするテラヘルツ光源の開発―モノリシック高温超伝導デバイスから円偏光電磁波の放射に成功―」
を京都大学時計台百周年記念館の中にある京都大学記者クラブで行いました。

記者説明はパワーポイントを用いた15分の説明の後、各記者からの質問に答える形で行われました。
論文の公開、京大からの発表は1月4日になります。
(1月7日追記:京大ウェブサイト記事へのリンク

研究成果は、超伝導体から作った1枚のデバイスから、特定の方向の偏りがない円偏光電磁波を放射させたことです。
円偏光電磁波は、GPSやETCに用いられていて、この技術を、高密度の情報通信が可能となるように、テラヘルツの周波数領域で実現しました。

既存のテラヘルツ光源が、発振と放射が別々の機構で動いていることと対照的に、超伝導テラヘルツ光源では、発振と放射が一つの形状で決まっていて、そのために自発的に高い円偏光度のテラヘルツ波が放射される点が非常に面白い点です。

 

記者レクに臨む掛谷(左)とアセム(右)

物理学会(岩手大学)で2件の発表

9月21日から24日まで岩手大学で行われた日本物理学会2017年秋季大会で、2件の口頭発表を行いました。

23aA29-3 2197
PbSr2Y1-xCaxCu2O7+δの固有ジョセフソン特性から提案される銅酸化物超伝導体におけるc軸伝導の普遍的記述
小森祥央, 鵜沢旭, 掛谷一弘
京大院工
領域6
23pC10-2 2129
Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δにおける固有ジョセフソン効果に観測される多重CuO2層の役割
野村義樹A, 岡本陸A, 足立伸太郎B, 渡辺孝夫B掛谷一弘A
京大院工A, 弘前大院理工B
領域8

新しい論文がSuperconductor Science and Technology誌に掲載

固有ジョセフソン接合におけるスイッチングダイナミクスに関する論文がSuperconductor Science and Technology誌に掲載されました。

Y. Nomura, R. Okamoto, and I. Kakeya,
“Negative correlation between enhanced crossover temperature and fluctuation-free critical current of the second switch in Bi2Sr2CaCu2O${}_{8+\delta }$ intrinsic Josephson junction”,
Supercond. Sci. Technol., 30 105001(2017).

DOI: 10.1088/1361-6668/aa7b23

Abstract

We have investigated the switching dynamics of the first and second switches in intrinsic Josephson junctions (IJJs) of Bi2Sr2CaCu2O${}_{8+\delta }$ with different maximum Josephson current density J c to reveal the doping evolution of interaction between IJJs. For the second switch, the crossover temperature between temperature-independent switching similar to quantum tunneling and thermally activated switching ${T}_{2\mathrm{nd}}^{* }$ is remarkably higher than that for the first switch. Moreover, ${T}_{2\mathrm{nd}}^{* }$ slightly decreases with increasing J c, which violates the conventional relation between the crossover temperature and the critical current density. These features can be explained not by a change in the Josephson coupling energy but by a change in the charging energy of the Josephson junction. We argue that the capacitive coupling model explains the increase in the fluctuation in the quantum regime of the second switch and the anti-correlation between ${T}_{2\mathrm{nd}}^{* }$ and J c. Furthermore, inductive coupling does not contribute to these peculiar phenomena in the switching dynamics of stacked IJJs.

野村義樹氏博士論文公聴会

6月16日(金)京都大学桂キャンパスにおいて、2017年3月博士課程指導認定退学の野村義樹氏の博士論文公聴会が執り行われ、3名の審査委員の審議の結果、博士論文が受理されました。

博士論文題目は
「Bi系高温超伝導体固有ジョセフソン接合における接合間相互作用下の巨視的量子トンネル現象に関する研究」
であり、論文では、複数のビスマス系高温超伝導体を用いて、巨視的量子トンネル現象の系統的に記述するためのモデルを提案しています。

野村氏には7月31日付で博士(工学)が授与され、授与式は9月30日に行われる予定です。

Phys. Rev. Bから論文の発表

弘前大・東大・東北大との共同研究の成果に関する論文が固体物理の専門誌Phys. Rev. Bに掲載されました。

Origin of positive out-of-plane magnetoconductivity in overdoped Bi1.6Pb0.4Sr2CaCu1.96Fe0.04O8+\delta
Takao Watanabe, Tomohiro Usui, Shintaro Adachi, Yuki Teramoto, Mihaly M. Dobroka, Itsuhiro Kakeya, Akihiro Kondo, Koichi Kindo, and Shojiro Kimura
Phys. Rev. B 94, 174517 – Published 28 November 2016

磁性不純物であるFeをCuに置換して超伝導転移温度を低下させることで、東京大学物性研究所および東北大学金属材料研究所の精密測定可能な磁場で超伝導を破壊することが可能となり、超伝導揺らぎと擬ギャップを分離することに成功しました。

Plasma+2016で4件発表、ポスター1等賞受賞

10月10日から12日まで中華人民共和国、南京大学で行われた国際会議、10th International Symposium on Intrinsic Josephson Effects and Plasma Oscillations in High-Tc Superconductors (Plasma+ 2016)で招待講演1件(掛谷)、口頭発表1件(野村)、ポスター発表2件(アセム、岡本)を行いました。

学会の会場となった南京大学新キャンパス内のSchool of Electronic Scinece and Engineeringの建物
学会の会場となった南京大学新キャンパス内のSchool of Electronic Scinece and Engineeringの建物

D2のアセム君は、見事ポスター賞、それも45件中ただ1件のFirst prizeを受賞しました。おめでとうございます。

Asem Elarabi (D2) recieved the best poster award (1st place)

ポスター賞授賞式
会議の締めくくりのポスター賞授賞式

この学会は、集積機能工学研究室が主催して2014年11月に京都大学百周年時計台記念館で実施したTHz-plasma 2014に続く学会であり、世界各国から100人余りの参加者が得られました。

南京大学を初めとする中国本土の大学の研究者による招待講演もかなり多く、研究のレベルが速いスピードで向上しているのが肌で感じられました。

さらに、南京大学の学生によるポスター発表も数多く出されており、研究レベルは日本の国内学会における発表に相当するものだと感じました。議論に使った英語のレベルは、苦手そうな人も私がドクターの学生だった頃よりもわかりやすい英語を喋っているような印象でした。日本の学生、頑張れ!

キャンパスが美しいのにまず驚くのですが、研究室を見学させていただき、さらに驚きました。
最新鋭の設備で、居心地の良い空間。これは、何より羨ましい。

中国は、次代を担う若者に投資しています。翻って日本はどうでしょうか??

野村(D3)の口頭講演
口頭講演する野村(D3)
岡本(M1)のポスター発表。頑張りました。
岡本(M1)はポスター発表。頑張りました。
バンケットでの集積研メンバー。発表が終わっていない私(掛谷)が一番はしゃいでる?
バンケットでの集積研メンバー。発表が終わっていない私(掛谷)が一番はしゃいでる?
研究室OBの辻本氏(現筑波大)とドイツの大学院生・ポスドク
研究室OBの辻本氏(現筑波大)とドイツ・チュービンゲン大学の大学院生・ポスドク

 

雑誌「固体物理」に解説記事が掲載

アグネ技術センターから発行されている雑誌「固体物理」2016年9月号に筑波大学の辻本(前集積研学振SPD)と掛谷の共著による解説記事「固有ジョセフソン接合からのコヒーレントな連続テラヘルツ波の発生」が掲載されました。

超伝導の専門家でなくても、固体物理の基礎知識があれば理解できるように、執筆しましたので、是非ご高覧下さい。

なお、同号には、東京大学の岡田氏らにより執筆された鉄ヒ素超伝導体における渦糸フローの解説も掲載されています。こちらも注目です。

 

鉛系銅酸化物の90 K級高温超伝導に関する論文が出版

本研究では、これまでに超伝導特性の詳細が明らかにされていなかったPb系銅酸化物が90 K級の高温超伝導を示すことが良質なエピタキシャル薄膜の評価によって明らかになりました。

90K superconductivity of clean Pb1212
epitaxial films

S. Komori, A. Kondo, K. Kindo, and I. Kakeya
Superconductor Science and Technology, 29, 085007 (2016).
DOI:10.1088/0953-2048/29/8/085007

90 KのPb系高温超伝導薄膜に対して原子像の観察をはじめとした結晶性の評価からパルス強磁場中での超伝導特性の変化に至るまで種々の測定を行い、基礎的性質を明らかにするとともに、現在超伝導線材応用がすすめられている90 K級のイットリウム系高温超伝導体との電気特性の比較検討も行いました。

 

Pb系銅酸化物超伝導体における超伝導の「泡」に関する論文を出版

私たちの研究室で初めて単結晶膜の育成に成功したPb1212超伝導体について、テラヘルツ伝導度測定を行い、超伝導揺らぎの存在を示す結果を超伝導研究の専門誌、Physica Cに発表しました。

Terahertz conductivity in the under-doped Pb1−ySr2Y1−xCaxCu2+yO7+δ epitaxial film

Akira Uzawa, Sachio Komori, Yuta Kamei, Itsuhiro Kakeya

Available online 18 May 2016

本論文では、テラヘルツ時間領域分光法を用いて、Pb1212エピタキシャル膜のab面内交流伝導度を観測しました。
その結果、直流抵抗が減少し始める超伝導転移の開始よりも高い温度でも、超流体(超伝導を担う成分)が短い時間存在する超伝導揺らぎが観測されることがわかりました。
この結果は、新しい超伝導体であるPb1212をYBCOに替わる超伝導線の材料として検討していくのに不可欠な知見となります。