11月19日、京都府立洛北高等学校附属中学校の1年生80人を対象に、京都府教育委員会「子どもの知的好奇心をくすぐる体験授業」の一環で掛谷と小林(B4)が出前授業を行いました。
今年度は出前授業の依頼は無いかもしれないと思っていましたが、ありがたくもお話をいただき、大変楽しみにしていました。
とはいえ、中学生向けの出前授業は過去に何度か経験があるものの、今は「密」を避ける工夫をしなければならないことと、今回は中高一貫校であることから内容を大幅に改め、話題の主役を「電気と低温」から「電磁波」に変えて生徒同士のディスカッションを重視した内容にしました。
題して
「身の回りの工学~世界は波であふれている~」
参加の生徒から「どこかで聞いたことある題名やな~」という突っ込みを受けました。さすが、鋭い。
内容の詳細は省略するとして、B4小林君の絶妙な場回しもあり、講義と議論は大盛り上がり、非常に楽しい時間を過ごすことができました。
このうちの何人かに数年後研究の場で会うことがあることを楽しみにしています。
ここから余談:私(掛谷)が訪問を楽しみにしていたもう一つの理由は、洛北高校が湯川秀樹・朝永振一郎の出身校であるのを知っていたからです。ご案内いただいた先生に「何か記念のものを拝見できますか?」と聞いてご案内いただいたのが以下の写真です。
右から湯川秀樹、朝永振一郎、貝塚茂樹の肖像写真。ほか、今西錦司、梅棹忠雄が卒業生だそうです。
これで、お二人が在籍された京大・阪大・東京教育大(現筑波大)、そして京都第一中学校をコンプリートです。洛北高校は在籍したわけではありませんが…。
この後、副校長先生に学校内をご案内いただき、洛北高校を離れました。大変楽しめた土曜日の午前でした。
ドイツ北部、ハンブルグ郊外にあるDeutsches Elektronen-Synchrotron (DESY) を掛谷が訪問し、
“Phase dynamics of stacked intrinsic Josephson junctions in Bi2Sr2Can-1CunO2n+4: role of the CuO2 planes composing superconducting layers “というタイトルでセミナー講演を行いました。数多くの質問をいただき、活発な議論が交わされました。
DESYでは、ハンブルグ大に所属する理論研究者とMax-Planck Instituteに所属する実験研究者が高温超伝導体における非線形・非平衡応答の研究を進めており、私たちの研究室との情報交換のための交流が実現しました。
ホストは、ポスドク研究員のJunichi Okamotoさんで、実は学部が京大出身で、私たちの研究室の卒業生と某部活で同じだったとか。狭い世界です。
当地では、2日研究室に滞在し、岡本さん、Ludwig Mathey教授と議論し、実験家のAndrea Cavalleri教授とも議論し、最新鋭の時間領域分光の実験装置を見学しました。
大学近くのレストランでランチ。左からCavalleri, Mathey, Okamoto, 掛谷
7月17日の午後、客員教授として在籍しているパリ高等師範学校(Ecole Normale Surperieure)のLaboratoire perre aigrainでのセミナー 講演の機会をいただきました。
“Emission of coherent terahertz electromagnetic wave from intrinsic Josephson junctions of high-temperature superconductors: progress and perspective ”
と題した講演で、高温超伝導体を基盤としたテラヘルツ光源にかんするこれまでの進展と将来の展望について1時間余りの講演をさせていただきました。
講演前の緊張する時間。
夏休みが始まったタイミングにもかかわらず、多くの方が聴講に来られて、非常に多くの質問をいただきました。
LPAにおいてテラヘルツ光源は半導体による量子カスケードレーザーが良く研究されていましたが、私たちが発見した高温超伝導テラヘルツ光源は量子カスケードレーザーを補完する連続テラヘルツ光源だということを理解していただけたように感じました。
ジョセフソン接合についての説明。聴衆の方を見てしゃべるべきですね。
7月9日、パリ若手物理学者の会で講演する機会をいただき、
「超伝導現象にみられる自然の普遍性ーHiggs機構から蛍の明滅までー」
という大げさなタイトルで、研究者になったいきさつから超伝導の基礎的概念までお話しさせていただきました。
「パリ若手物理学者の会(若物会)」は、パリ及びその近郊に滞在して広い意味での物理学に関係する研究者の集まりで、おおむね月に1度セミナーを開催してお互いの研究について議論をし、海外生活に関する情報を交換しています。
参加者の背景は様々で、素粒子理論・宇宙論のポスドクや惑星科学の博士課程学生、私のような物性物理の教員も当然いますが、医師を含めた生物の研究者も参加しています。
パリ国際大学都市日本館の大ホールで講演することになり、なかなか素敵な雰囲気です。
そういった広い背景を持つ聴講者なので、なかなか話の出来ない、大学での講義、アウトリーチ活動、研究プロジェクト獲得の苦労話もさせてもらいました。
磁気浮上をはじめとする超伝導現象についての紹介をしましたが、これが意外にも知られておらず、驚きをもって聞いていただきました。まだまだ超伝導について布教の余地があるようで、志を新たにしました。
皆さんから様々なご質問をいただき、大変充実した時間になりました
6月12日、パリ郊外、PalaisauにあるEcole PolytechniqueのYannis Laplace博士に招かれて、セミナーを行いました。
パリの住まいであるCite Internationale UniversaireからRERという通勤鉄道に20分ほど乗った場所にあるLozereという小さな駅から階段を含む山道を登って着いた先は、大学のキャンパスながら馬が放牧されているという素晴らしい環境。
Yannisと会って、大学を案内してもらいました。彼の説明ではこの学校はフランス軍のエリートを育成する学校で、学部は全寮制となっている。入学試験には数学や物理だけでなく、運動もあり、なかなかスパルタンな学生がそろっているとのこと。そのため、制服姿の兵士(時に銃を持っている)もうろうろしているという、さらに日本ではありえない状況が見られます。馬が放牧されている長閑さとのコントラストが印象的です。
さて、セミナーでは固有ジョセフソン接合からのテラヘルツ発振を中心に私たちの研究を紹介しました。
45分の予定のところ、質疑応答が多く、90分も使ってしまいました。月曜日の午前中だったせいか、言葉が出てこなくて苦労しましたが、皆さん辛抱強く聞いてくださいました。
その後、Yannisと共同研究の話をして、9月までにもう一度会うことを約束して別れました。
また、私たちの研究分野で長らく活躍されているMarcinとKeesにも会うことができて、素晴らしい1日になりました。
ロンドン訪問に引き続き、ケンブリッジ大学を訪問しました。
ロンドンから郊外電車で1時間、ケンブリッジに到着します。
昨年まで集積研に在籍していた小森氏と待ち合わせ、博士研究員として勤務する物質科学科を見学しました。
ケンブリッジ大学には2009年に一度訪問したことはあるのですが、じっくり研究室を見学させてもらうのは初めてでした。ひとりに1台と言っても過言ではないのスパッタ装置やX線回折装置など、実験装置の充実ぶりにはとにかく驚いた。ここで結果出せないとダメという小森君の決意を聞きながら、ここまでそろっている研究者に勝つためにはどうしたらいいのか、考えながら見学していました。
論文作成のための濃密な議論がほぼ終わった日曜日、筑波大出身のKaveh氏とも合流して、物理学者のあこがれCavendish研究所も見学できました。
滞在中のケンブリッジは、30度を超えるという、真夏でもあまり経験しない暑さ。
ケム川のボートや日光浴を楽しむ人たち、老若男女の観光客でケンブリッジの町はにぎわっていました。
ケンブリッジはいわゆる学園都市なのですが、つくばなど日本の学園都市にもこのように観光客が来るようになれば、日本の科学もより豊かになると思いました。
イギリス・ロンドンにあるUniversity of College LondonのPaul Warburton 教授を訪問し、講演の機会を頂きました。
ロンドンへは、パリからユーロスターで2時間半。大阪から東京に行く時間ですが、パリの北駅ではフランスの出国とイギリスの入国手続きもありました。数日前にマンチェスターで起きたテロのせいか、入国審査では滞在期間や行先など事細かに聞かれ、出発数分前、ようやく列車に乗ることができました。
ロンドンのセントパンクラス駅に到着後のユーロスター
翌日11時から始まった講演には、多数の聴講者に参加頂き、活発な質疑応答がなされて、予定の1時間半を超えて、2時間におよびました。
講演後は、Warburton研究室の若手と議論を重ねました。京都の国際会議に来てくれたPhDの学生や、2009年に京大の学生と訪問した時から在籍しているポスドクと固有ジョセフソン接合や位相スリップの議論を行いました。
夕方はラフボロー大学物理学科が主催するSir Nevill Mott Lecture に出席するため、East Londonの2012年ロンドンオリンピック跡地にあるラフボロー大学ロンドンキャンパスに移動しました。
モットレクチャーのサイネージ。ロンドンの都心でやっているようなデザインですが、ロンドンの人に言わせると、East Londonは違う街だそうです。
トポロジカル物質に関する光電子分光について、Princeton大学のZahid Hasan教授による素晴らしい講演が聞けました。
その後のカクテルパーティやディナーでは、幸運にも講演者と話すことができて、ホストかつ旧友であるLoughbrough大学のSergeyやMaratと物理学談義に花を咲かせました。
京都市教育委員会「子どもの知的好奇心をくすぐる体験授業」の一環として、京都府南部の木津川市立高の原小学校の5年生57人に「温度と電気のふしぎ」という題の授業を行いました。
出前授業は、2クラスまとめて、2時間目と3時間目を続けて行いました。
まずは、超伝導体を液体窒素で冷やして、浮かせた磁石を見せるのは、いつものあいさつ。
次に、温度に関するお話。
子どもたちに膨らませてもらった風船を液体窒素でぺちゃんこしてびっくり。
温めたら元の大きさに戻って、また冷やしてぺちゃんこに。
これにはみんな大喜び。
休み時間を挟んだ3時間目には電気の話。
10円玉と1円玉、食塩水をしみこませたキッチンペーパーを使って8人の班に分かれて電池を作りました。
LEDが光った時には、驚きと喜びで歓声が上がりました。
科学を楽しみ、電気を身近に感じてくれた満足感をもって、高の原小学校を後にしました。
10月25日、京都府教育委員会の「子供の知的好奇心を刺激する出前授業」で、京都府南部、奈良に接する木津川市の木津南中学校に出前授業に行ってきました。
対象は、3年生全員200余名、2クラスづつ3回に分けて45分の授業をさせてもらいました。
お題目は「身のまわりの工学」。
超伝導のデモンストレーションを見せて驚いてもらったのち、スマートフォンを題材に、「工学」や「グローバル化」について彼らと一緒に考えました。
事前課題として、生徒に以下の課題について考えてもらい、班ごとに発表してもらいました。
あなたの身の回りにある工業製品やサービスで、仕組みを知りたいもの、うまくできているなと驚いたものを挙げて下さい。
よく知っている製品やサービスを組み合わせて、新しい製品やサービスを考えてみましょう。
あなたが将来、外国に行って仕事をする、あるいは逆に日本で外国人と一緒に仕事をすることを考えたことはありますか?あれば、どこの国でどんな仕事をしていますか?また、そのために必要な準備を想像してみて下さい。
10代の中学生らしく、柔軟でユニークな答えをもらいました。
また、生徒の発表の様子を見たり、先生方の言葉を聞たりして、自分自身が中学生だった時を思い出しました。
中学校のサイトにも記事 が掲載されていますので、ご覧下さい。
こういう機会は、研究者を志した初心に戻れる良い経験です。これからも続けていきたいと思います。
最後に、3クラス目の生徒たちと集合写真。皆さんかわいいね。
10月10日から12日まで中華人民共和国、南京大学で行われた国際会議、10th International Symposium on Intrinsic Josephson Effects and Plasma Oscillations in High-T c Superconductors (Plasma+ 2016) で招待講演1件(掛谷)、口頭発表1件(野村)、ポスター発表2件(アセム、岡本)を行いました。
学会の会場となった南京大学新キャンパス内のSchool of Electronic Scinece and Engineeringの建物
D2のアセム君は、見事ポスター賞、それも45件中ただ1件のFirst prizeを受賞しました。おめでとうございます。
Asem Elarabi (D2) recieved the best poster award (1st place)
会議の締めくくりのポスター賞授賞式
この学会は、集積機能工学研究室が主催して2014年11月に京都大学百周年時計台記念館で実施したTHz-plasma 2014 に続く学会であり、世界各国から100人余りの参加者が得られました。
南京大学を初めとする中国本土の大学の研究者による招待講演もかなり多く、研究のレベルが速いスピードで向上しているのが肌で感じられました。
さらに、南京大学の学生によるポスター発表も数多く出されており、研究レベルは日本の国内学会における発表に相当するものだと感じました。議論に使った英語のレベルは、苦手そうな人も私がドクターの学生だった頃よりもわかりやすい英語を喋っているような印象でした。日本の学生、頑張れ!
キャンパスが美しいのにまず驚くのですが、研究室を見学させていただき、さらに驚きました。
最新鋭の設備で、居心地の良い空間。これは、何より羨ましい。
中国は、次代を担う若者に投資しています。翻って日本はどうでしょうか??
口頭講演する野村(D3)
岡本(M1)はポスター発表。頑張りました。
バンケットでの集積研メンバー。発表が終わっていない私(掛谷)が一番はしゃいでる?
研究室OBの辻本氏(現筑波大)とドイツ・チュービンゲン大学の大学院生・ポスドク
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京都大学の超伝導・真空電子デバイスに関する研究室, Research group for superconducting and vaccum electronics in Kyoto Univ.