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国際会議New3SC-11で口頭講演

スロベニア共和国のブレッドで開催された超伝導に関する国際会議
“11th International Conference on New Theories, Discoveries, Applications of Superconductors and Related Materials (New3SC-11)”
に掛谷(私)が出席し、
“Intrinsic Josephson properties and superconducting fluctuation in PbSr2(Y,Ca)Cu2O7+δ films”
と題した講演を行い、Pb1212エピタキシャル膜に関する研究成果を発表しました。

参加者集合写真。掛谷は左端。
参加者集合写真。掛谷は左端。左後ろに見えるのが、ブレッド城。

本会議は、スロベニア共和国の首都リュブリャナから高速道路で1時間ほどの距離にあるブレッド湖の湖畔のHotel Golfにおいて、当地のJosef Stephan Institute およびUniversity of Ljubljanaなどの研究者によって運営されました。
また、一連の会議は、重慶科学技術院のJ. D. Fan教授が1999年より開催し続け、11回を数える伝統ある会議です。私は初参加させて頂きましたが、Fan教授の努力に敬意を表します。

主要なトピックは、超伝導体における非平衡現象で、特に最近時間分解分光により実験的に明らかになってきた超伝導体の過渡現象や隠れた秩序状態について、理論・実験両面からの活発な議論がなされました。スロベニア国内から参加した研究者が意外に多く、非平衡超伝導に関する研究の層がとても厚いことを感じました。また、イタリアのトリエステが車で2時間、オーストリアのグラーツも同じぐらいの距離で、ヨーロッパ各地からの参加者が多いことが、スロベニアの地理的重要性を示していました。

バンケット翌朝のブレッド湖。雨上がりのきれいな空。
バンケット翌朝のブレッド湖。雨上がりのきれいな空。

私の発表では、Pb1212のc軸固有ジョセフソン特性に加え、テラヘルツ時間領域分光法による複素伝導率の測定結果から超伝導揺らぎの議論を行いました。ホストの一人であるMihailovic教授からコメントを頂いたほか、数多くの研究者からの質問とコメントを受けました。

バンケットは、ブレッド湖の湖畔に聳えるブレッド城で行われました。
あいにくの雨の中、滑りやすい石段を登ったあとに始まったのは、中世風に扮した女性のトーク。この城の由来などについて説明する英語の翻訳もついていました。さらに、男性によるファイヤーワークがあり、火の玉を振り回して、そのあと飲み込むという大道芸で、単純ながらなかなか面白い見物でした。

バンケットが行われたブレッド城の上のレストラン。
バンケットが行われたブレッド城の上のレストラン。

さて、バンケットでは、ドイツ、スイス、イタリアから参加した研究者と現地の美味しいものや、研究交流の様子などについて面白い話を聞けました。すでに知り合いだった研究者も数名いましたが、新しく知り合いになった研究者とユニークな交流ができて、大変有意義な会議でした。

バンケットの様子。ワインが振る舞われている。掛谷は真ん中奥に見える。
バンケットの様子。ワインが振る舞われている。掛谷が真ん中奥に見える。
ブレッド城から見た湖。右にあるのが、ブレッド島で、スロベニア唯一の自然島。
ブレッド城から見た湖。右にあるのが、ブレッド島で、スロベニア唯一の自然島。

鉛系銅酸化物の90 K級高温超伝導に関する論文が出版

本研究では、これまでに超伝導特性の詳細が明らかにされていなかったPb系銅酸化物が90 K級の高温超伝導を示すことが良質なエピタキシャル薄膜の評価によって明らかになりました。

90K superconductivity of clean Pb1212
epitaxial films

S. Komori, A. Kondo, K. Kindo, and I. Kakeya
Superconductor Science and Technology, 29, 085007 (2016).
DOI:10.1088/0953-2048/29/8/085007

90 KのPb系高温超伝導薄膜に対して原子像の観察をはじめとした結晶性の評価からパルス強磁場中での超伝導特性の変化に至るまで種々の測定を行い、基礎的性質を明らかにするとともに、現在超伝導線材応用がすすめられている90 K級のイットリウム系高温超伝導体との電気特性の比較検討も行いました。

 

Pb系銅酸化物超伝導体における超伝導の「泡」に関する論文を出版

私たちの研究室で初めて単結晶膜の育成に成功したPb1212超伝導体について、テラヘルツ伝導度測定を行い、超伝導揺らぎの存在を示す結果を超伝導研究の専門誌、Physica Cに発表しました。

Terahertz conductivity in the under-doped Pb1−ySr2Y1−xCaxCu2+yO7+δ epitaxial film

Akira Uzawa, Sachio Komori, Yuta Kamei, Itsuhiro Kakeya

Available online 18 May 2016

本論文では、テラヘルツ時間領域分光法を用いて、Pb1212エピタキシャル膜のab面内交流伝導度を観測しました。
その結果、直流抵抗が減少し始める超伝導転移の開始よりも高い温度でも、超流体(超伝導を担う成分)が短い時間存在する超伝導揺らぎが観測されることがわかりました。
この結果は、新しい超伝導体であるPb1212をYBCOに替わる超伝導線の材料として検討していくのに不可欠な知見となります。

ISS2015で3件の発表

11月16-18日に東京、船堀ホールで行われた28th International Symposium on Superconductivity (ISS2015)で、野村、アセムが口頭講演、鵜沢がポスター発表を行いました。

Oral Presentations

Nov. 17
PC-19
 15:40-15:55
Decrease in MQT Rate for Second Switch in Bi2Sr2CuO6+δ Intrinsic Josephson Junctions
Yoshiki Nomura, Hitoshi Kambara, Yifan Wen, Itsuhiro Kakeya

Nov. 18
FD-12
 10:20-10:40
Generation of Elliptically Polarized Terahertz Waves using a High-Tc Superconducting Bi2Sr2CaCu2O8+δ.
A. Elarabi, Y. Yoshioka, M. Tsujimoto, Y. Nakagawa, I. Kakeya

Poster Presentation

PCP-13  
Superconducting Fluctuation in PbSr2Y1-xCaxCu2O7+δ Epitaxial Films Observed by Terahertz Time-Domain Spectroscopy
Akira Uzawa, Sachio Komori, Itsuhiro Kakeya