「ニュース・最新情報」カテゴリーアーカイブ

Pb系銅酸化物超伝導体における超伝導の「泡」に関する論文を出版

私たちの研究室で初めて単結晶膜の育成に成功したPb1212超伝導体について、テラヘルツ伝導度測定を行い、超伝導揺らぎの存在を示す結果を超伝導研究の専門誌、Physica Cに発表しました。

Terahertz conductivity in the under-doped Pb1−ySr2Y1−xCaxCu2+yO7+δ epitaxial film

Akira Uzawa, Sachio Komori, Yuta Kamei, Itsuhiro Kakeya

Available online 18 May 2016

本論文では、テラヘルツ時間領域分光法を用いて、Pb1212エピタキシャル膜のab面内交流伝導度を観測しました。
その結果、直流抵抗が減少し始める超伝導転移の開始よりも高い温度でも、超流体(超伝導を担う成分)が短い時間存在する超伝導揺らぎが観測されることがわかりました。
この結果は、新しい超伝導体であるPb1212をYBCOに替わる超伝導線の材料として検討していくのに不可欠な知見となります。

楕円偏光テラヘルツ波の発振についての論文が出版

Physics Procedia誌に、高温超伝導体メサ構造から楕円偏光のテラヘルツ波を発振させる提案についての論文が出版されています。

Polarization Enhancement of Terahertz Radiation Generated by Intrinsic Josephson Junctions in a Truncated Edge Square Bi2Sr2CaCu2O8+δ Mesa 

A. Elarabi, ,Y. YoshiokaM. TsujimotoY. NakagawaI. Kakeya

本論文では、正方形の対向する2角を落とした六角形のメサ構造から発振されるテラヘルツ波を円偏光にするデザインについて提案しています。

円偏光の電波は、感度がアンテナの向きに依存しないので、携帯電話や衝突防止レーダーなど遠隔通信に利用されています。

円偏光のテラヘルツ波は、現在の1000倍に及ぶ情報密度の近距離非接触データ転送や、化学物質のキラル異性体(鏡像対称性)の分別への応用が期待されています。

これまで、テラヘルツ波を円偏光にするためには、1/4波長板などの光学素子を用いていましたが、本技術によって、簡便なセットアップで円偏光が発振できるだけでなく、円偏光を維持して周波数をチューニングできることが可能になりました。

 

高温超伝導テラヘルツ光源のレビュー論文が出版

掛谷准教授と物質材料研究機構の王華兵博士の共著による高温超伝導テラヘルツ光源に関するレビュー論文が出版されました。

Terahertz-wave emission from Bi2212 intrinsic Josephson junctions: a review on recent progress

Itsuhiro Kakeya and Huabing Wang

Published 16 May 2016© 2016 IOP Publishing Ltd
Superconductor Science and Technology, Volume 29, Number 7

本論文は、高温超伝導テラヘルツ光源の研究に関するここ数年の進捗(発振強度および発信周波数の上昇)のほか、積層ジョセフソン接合の同期メカニズムと発振特性制御の面から注目されている温度分布に注目して、これまでの研究成果をまとめました。

レビュー論文ですが、オリジナルの図もいくつかあり、とくに、高温超伝導テラヘルツ光源と半導体のテラヘルツ光源の動作範囲をまとめた図や、高温超伝導テラヘルツ光源の発信周波数上限がジョセフソン最大電流の平方根で与えられることを示唆する図はぜひ参考にしていただきたいところです。

Tb-Pvsf

学振特別研究員(SPD)辻本学が筑波大学の助教に転出

日本学術振興会特別研究会(SPD)として、当研究室で活躍した辻本学が筑波大学数理物質系に国際テニュアトラック助教に1月1日付で着任のため、転出しました。集積研では、数多くの論文を書き、多数の賞を授賞しました。

筑波大学では、助教ながら研究室主宰者として、研究を自律的に進めて行きます。

今後とも活躍されること間違いありません。

研究室のポリシー

私たちの研究室では、自由な雰囲気のもと、メンバーが各自のペースで研究活動を実施しています。

研究室で重視していることは、

  • 常識にとらわれないこと
  • 失敗を恐れずにチャレンジすること
  • とにかく、全力を尽くすこと

です。

このような姿勢ができていれば、必ず研究成果はついてきます。

とはいえ、未知のことに挑戦しているわけですから、努力が研究成果として間違いなく表れるとは限りません。

たとえ、研究成果として実を結ばなかったとしても、苦労して得た経験や人脈というのは、その後の人生にかけがえのない宝になるはずです。

研究室では、挨拶と会話を重視します。これは、発想の瞬発力を鍛えます。

たとえば、廊下で誰かとすれ違うとします。このとき、あなたの頭の中では、いろんな考えが働きます。

最悪なのは、黙ってすれ違おうという考えです。

そこを頭を巡らせて、何か一言気の利いた言葉をかければ、そこであなたの印象もアップしますし、あなたの発想も鍛えられたことになります。

このようなことの繰り返しで、研究だけでなく、発表、発想力が鍛えられると思います。

ぜひ、このような研究生活を過ごしてみたいと思いませんか。

THz-plasma2014報告(正式版)

第9回高温超伝導体における固有ジョセフソン効果とテラヘルツ発振に関する国際会議(略称: THz-plasma 2014)」は2014年11月30日(日)から12月3日(水)の4日間にわたり、京都大学百周年時計台記念館国際交流ホールなどで開催されました。

オープニングトーク
掛谷によるオープニングトーク

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感謝:国際学会が無事終了しました

11月30日から12月3日まで実施した国際学会THz-plasma2014の主催を無事終えることができました。各国からお越し頂いた皆さん、奴隷のように働いてくれた研究室の学生さん、アルバイトに参加してくださった京大の学生さんに感謝します。また、支援くださった財団、学会、企業の皆様に感謝申し上げます。

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この集合写真はエクスカーションの前で、ちょっと寒かったですが天候も良く、皆さん最高の笑顔です。

国際学会運営アルバイト募集

集積機能工学研究室では、11月30日から12月3日まで京都大学百周年記念館2階ににおいて、国際学会THz-plasma2014を運営します。

THz-plasma2014webサイト

この会議を手伝って下さる京大の学部生を募集しております。

業務の時間区分は
11/30 午後(13:00-17:00) 夕方(17:00-21:00)
12/1 午前(8:45-13:00) 午後(14:00-17:00) 夕方(17:00-21:00)
12/2 午前(8:45-13:00) 夕方(17:00-21:00)
12/3 午前(8:45-13:00) 午後(14:00-17:00) 夕方(17:00-21:00)
から複数を選択してもらうことになります。

業務内容
・会場設営・撤収補助
・参加者の会場への案内(学内外)
・セッションでのタイムキーパー、発表者補助、質問者へのマイク渡し
・休憩の準備・片付け
・レセプション、懇親会などの準備・片付け
・その他

詳しくは、当研究室の担当者(岸本kishimoto@sk. kuee.kyoto-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい。

鳴海康雄氏による講演会

東北大学金属材料研究所准教授鳴海康雄氏による講演会を実施しました。

旅するパルス超強磁場

-放射光軟X線分光との融合による元素・価数・軌道選択強磁場磁化測定法 とその応用-
Traveling Pulsed High Magnetic Field
-Element, Valence and Orbital Specific High-Magnetic-Field Magnetometry
and its Applications in Collaboration with Synchrotron Soft X-ray
Spectroscopy-

軟X線吸収分光におけるX線磁気円二色性(XMCD)は、左右異なる円偏光X線が物質に吸収される際の差として定義され、その大きさが物質の持つ磁気偏極の大きさに比例することから、分光学的磁化測定法として利用されている。XMCDは元素固有の共鳴吸収条件においてのみ観測されるため、その磁気情報は元素選択性を有する。そのため、強磁性材料研究において、XMCD測定は非常に強力なツールとして発展し、利用されてきた。例えば、強磁性材料として有名なネオジム磁石は、主組成であるNdやFe以外にDyなど複数の元素を含んで最高の性能を発揮する。その時、個々の元素がどのような役割を担っているかを知ることは、磁気特性の向上において非常に重要な課題である。一方で、磁性を利用した制御に目を向けると、メタ磁性転移と構造相転移を伴う磁気形状記憶合金や、磁場の印加で電気分極が発生するマルチフェロイック物質など、反強磁性的な相互作用が重要な役割に担う、興味深い物質が数多く見いだされている。よく知られていることではあるが、多くの磁石材料は反強磁性相互作用を内包するフェリ磁性体である。このような背景のもとに、我々は2008年に、新しいツールとしてのXMCDを、基礎・応用に限らず広く物質に適応していくため、反強磁性相互作用に打ち勝つ強力な磁場を備えたXMCD測定装置の開発に着手した。XMCD測定には、エネルギー可変な高輝度円偏光軟X線を生み出す放射光の利用が必須である。そこで我々は、軟X線分光実験が可能な超高真空対応のパルスマグネットと、放射光施設に持込可能な可搬で小型の強磁場用電源を開発し、40Tの強磁場中で軟X線分光が可能な装置の開発に世界で初めて成功した[1,2]。このセミナーでは、磁性薄膜[3]や、磁場誘起価数転移物質[4]、マルチフェロイック物質への応用例を交えながら、パルス強磁場軟X線分光装置の詳細とその可能性について紹介する。

[1] T. Nakamura et al, Appl. Phys. Exp. 4, 066602 (2011).

[2] Y. Narumi et al., Synch. Rad. News, 25, 12 (2012).

[3] Y. Shiratsuchi et al., App. Phys. Lett. 100, 262413 (2012).

[4] T. Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn.,  81, 103705 (2012).