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Phys. Rev. Bから論文の発表

弘前大・東大・東北大との共同研究の成果に関する論文が固体物理の専門誌Phys. Rev. Bに掲載されました。

Origin of positive out-of-plane magnetoconductivity in overdoped Bi1.6Pb0.4Sr2CaCu1.96Fe0.04O8+\delta
Takao Watanabe, Tomohiro Usui, Shintaro Adachi, Yuki Teramoto, Mihaly M. Dobroka, Itsuhiro Kakeya, Akihiro Kondo, Koichi Kindo, and Shojiro Kimura
Phys. Rev. B 94, 174517 – Published 28 November 2016

磁性不純物であるFeをCuに置換して超伝導転移温度を低下させることで、東京大学物性研究所および東北大学金属材料研究所の精密測定可能な磁場で超伝導を破壊することが可能となり、超伝導揺らぎと擬ギャップを分離することに成功しました。

鳴海康雄氏による講演会

東北大学金属材料研究所准教授鳴海康雄氏による講演会を実施しました。

旅するパルス超強磁場

-放射光軟X線分光との融合による元素・価数・軌道選択強磁場磁化測定法 とその応用-
Traveling Pulsed High Magnetic Field
-Element, Valence and Orbital Specific High-Magnetic-Field Magnetometry
and its Applications in Collaboration with Synchrotron Soft X-ray
Spectroscopy-

軟X線吸収分光におけるX線磁気円二色性(XMCD)は、左右異なる円偏光X線が物質に吸収される際の差として定義され、その大きさが物質の持つ磁気偏極の大きさに比例することから、分光学的磁化測定法として利用されている。XMCDは元素固有の共鳴吸収条件においてのみ観測されるため、その磁気情報は元素選択性を有する。そのため、強磁性材料研究において、XMCD測定は非常に強力なツールとして発展し、利用されてきた。例えば、強磁性材料として有名なネオジム磁石は、主組成であるNdやFe以外にDyなど複数の元素を含んで最高の性能を発揮する。その時、個々の元素がどのような役割を担っているかを知ることは、磁気特性の向上において非常に重要な課題である。一方で、磁性を利用した制御に目を向けると、メタ磁性転移と構造相転移を伴う磁気形状記憶合金や、磁場の印加で電気分極が発生するマルチフェロイック物質など、反強磁性的な相互作用が重要な役割に担う、興味深い物質が数多く見いだされている。よく知られていることではあるが、多くの磁石材料は反強磁性相互作用を内包するフェリ磁性体である。このような背景のもとに、我々は2008年に、新しいツールとしてのXMCDを、基礎・応用に限らず広く物質に適応していくため、反強磁性相互作用に打ち勝つ強力な磁場を備えたXMCD測定装置の開発に着手した。XMCD測定には、エネルギー可変な高輝度円偏光軟X線を生み出す放射光の利用が必須である。そこで我々は、軟X線分光実験が可能な超高真空対応のパルスマグネットと、放射光施設に持込可能な可搬で小型の強磁場用電源を開発し、40Tの強磁場中で軟X線分光が可能な装置の開発に世界で初めて成功した[1,2]。このセミナーでは、磁性薄膜[3]や、磁場誘起価数転移物質[4]、マルチフェロイック物質への応用例を交えながら、パルス強磁場軟X線分光装置の詳細とその可能性について紹介する。

[1] T. Nakamura et al, Appl. Phys. Exp. 4, 066602 (2011).

[2] Y. Narumi et al., Synch. Rad. News, 25, 12 (2012).

[3] Y. Shiratsuchi et al., App. Phys. Lett. 100, 262413 (2012).

[4] T. Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn.,  81, 103705 (2012).