日時・アクセス
2020 年 3 月19 日12:30から
〒600-8216 京都府京都市下京区東塩小路町939 キャンパスプラザ京都 京都大学サテライト講習室(6階・第8講習室)
プログラム
12:30 はじめに
12:40 北野 晴久
13:20 山下 太郎
13:50 大西 絋平
14:30 横山 知大
15:10 休憩
15:20 宍戸 寛明
15:50 掛谷 一弘
16:30 久保 結丸
17:10 馬場 基彰
17:40 ディスカッション
会議は円卓方式で、参加者の間には十分な間隔を取って行います。
講演者はピンマイクを使用し、質疑応答ではハンドマイクを使用しません。
講演要旨(順不同)
北野 晴久(青山学院大学)
層状超伝導体の高品質微小接合素子に関する今後の展望-Bi2212固有接合系のマイクロ波非線形効果とFe(Te,Se)微小接合系のJosephson効果
我々は、銅酸化物系や鉄系など層状結晶構造を持つ高温超伝導体単結晶からFIB微細加工技術を用いて高品質な微小接合素子を作製し、その特性評価から単結晶ベースの超伝導量子ビット素子を創発することを目指している。本講演では、Bi2212固有ジョセフソン接合系において我々が見出したマイクロ波非線形効果と高次位相スイッチにおけるMQT的挙動の新解釈について紹介すると共に、トポロジカル超伝導体としても最近注目されるFe(Te,Se)に関して、ピックアップ法を用いた面間微小接合素子の作製とJosephson効果の発現について現状報告したい。
山下 太郎(名古屋大学)
強磁性π状態による位相制御
π状態やスピン三重項クーパー対など多様な物理現象が発現する強磁性ジョセフソン接合に関して、最近の進展と講演者が取り組んでいる量子回路応用を中心に解説する。特に、講演者が確立した窒化物超伝導体ベースのπ接合を用いた新奇な超伝導量子ビット研究開発に関して、最新の成果を発表する。
大西 紘平(九州大学)
超伝導体/常伝導体多層膜におけるスピン依存伝導
超伝導体と強磁性体からなる複合ナノ構造において、その電子スピン状態の競合から新奇な物性現象が期待されているが、逆近接効果などの外的要因による信号が重畳するという問題があった。そこで、超伝導体に接合した非磁性常伝導体中にスピン偏極状態を誘起することにより、超伝導状態におけるスピン偏極電子の振る舞いを調べたので、これを報告する。また講演では、スピン伝導特性制御に関する試みについても触れる予定である。
横山 知大(大阪大学)
多端子系のジョセフソン接合の物理
近年、このジョセフソン接合を多端子系に拡張すると、巨視的な量子位相が多自由度に拡張されるため、新しい物理現象の舞台となることが明らかにされた。この舞台でのトポロジカル物性や実験の進展を紹介する。
宍戸 寛明(大阪府立大学)
超伝導検出器による中性子イメージング
我々は超伝導ストリップラインを用いて遅延時間法による2次元イメージング検出器の開発を,中性子ビームをターゲットとして行っている.超伝導ストリップラインにホットスポットが生じ局所的に超伝導電子密度の時間変化が起こると,DCバイアス電流を印可した状態では電圧パルスが生じる.電圧パルスは超伝導ストリップライン両端まで電磁波として伝送する.伝送時間の差をとることでホットスポット位置を特定できる.互いに直交する超伝導ストリップラインをメアンダ状に折りたたむことで,高い位置分解能を持つ2次元検出器を実現した.
掛谷 一弘(京都大学)
固有ジョセフソン接合積層構造を用いたテラヘルツ偏光制御と量子操作
我々は、高温超伝導体Bi2212メサ構造から円偏光のテラヘルツ波を放射させることを報告したが、進行方向に対する電場の回転方向を示すヘリシティについては正確な測定と制御ができていなかった。今回、構造を工夫し、ヘリシティがの正負が制御できるデバイスを作成することができた。本講演では、その結果を紹介し、それをもたらす温度分布、固有接合間の同期メカニズムについて、数値計算の結果も含めて議論する。
久保結丸(OIST)
量子情報技術のための「古くて新しい」メーザー(オンライン講演)
メーザーとは誘導放出を用いたマイクロ波増幅のことであり,レーザーのマイクロ波版である.歴史的には,メーザーがTownesらによってまず先に開発され,後のレーザーの開発に繋がっている.メーザーは1950年代後半から60年代前半にかけてアメリカを中心に多くの研究開発がなされていたが,半導体を用いた増幅技術の台頭と供に廃れてしまった. 我々は最近,このメーザーが実は極低温においては量子情報技術へ極めて有用である可能性を見出した.講演では,我々が現在取り組んでいる,量子情報の観点から見たメーザーの研究を紹介する.
馬場 基彰(京都大学)
光の相転移と超伝導回路でのその実現
超放射相転移と呼ばれる相転移現象が1973年頃から現在に至るまで,量子光学の分野で探求されている.熱平衡下において静的な電磁場が物質中の分極と共に自発的に現れる2次の相転移現象である.当初提案された電磁場の共振器系では未だに観測例がないが,超伝導回路における電荷や電流が類似の相転移を示しうることが最近理論的に分かってきた.この超伝導電荷や超伝導電流の相転移について,またその応用例について講演する.