研究内容詳細

本研究室では,超伝導あるいは強磁性など電子の量子力学的多体効果による創発現象を対象として,基礎的な物理現象の解明からそれを応用した革新的デバイスの開発を目標とした研究を進めています.好奇心から始まり、社会に貢献する研究をともに進めましょう。

難易度別解説記事リスト

研究対象

1.超伝導とその応用に関する研究

超伝導という現象はある温度で突然電気抵抗がゼロになる,本来ミクロの世界でしか顕れない電子の波動的な性質が物質全体にわたって巨視的に顕れるという不思議で驚くべき現象です.

超伝導の巨視的波動関数を電気信号に変換するのがジョセフソン接合であり,現在,電圧標準に使用されています.

多くの高温超伝導物質内部に存在する固有ジョセフソン接合は高温超伝導の物性研究やデバイス化に極めて有利です.

集積化されたジョセフソン接合の物理は非線形同期現象の典型的なシステムとして応用数学・生物学、電力ネットワークや人間関係に至るまで幅広い応用が可能です。

  • 高温超伝導体からのテラヘルツ電磁波発振のメカニズム解明と高出力化
  • 巨視的量子トンネル現象の観察と高温超伝導量子ビットの実現
  • 高温超伝導のエネルギー構造からの高温超伝導発現機構解明へのアプローチ

超伝導体の探索も密かに行っています.新超伝導体を発見して歴史に名を残そう!!

最近話題の超伝導量子計算機に関連する研究もおこなっており、国内外での超伝導デバイスの実用化に積極的に関与していきます。

集積機能工学研究室の代表的な研究対象物質である3種のビスマス系銅酸化物超伝導体の結晶構造。超伝導転移温度はBi2201で40ケルビン、Bi2212で90ケルビン、Bi2223で120ケルビンである。
測定対象デバイスをクライオスタットにマウントした状態
2. テラヘルツ領域の光源と電磁応答に関する研究

電波と光の間の周波数に位置するテラヘルツ領域は現在開拓が進められている熱い周波数帯域です. 空港で行われている保安検査、医療診断、超高速データ転送への応用が期待されています.

私たちは、高温超伝導体を用いて新しい機能をもつテラヘルツ光源を開発しています。また、この周波数には新しい物理現象が眠っています。

これを時間分解で観察し、ミクロな物理現象を可視化する研究を進めています。

  • 高温超伝導体テラヘルツ光源の多機能・実用化
  • 時間領域分光法によるテラヘルツ応答を用いた物性研究
テラヘルツ時間領域分光システム構築中。
テラヘルツ発振検出分光装置
3. 電界放出現象の解析とその応用に関する研究

電界放出とは,強電界により低減した電位障壁をトンネルすることで,電子が固体内部から真空中に放出される現象や,表面付近の原子がイオン化する現象のことです.微細な電子源や局所分析などへの応用が期待されていますが,電界放出現象は十分理解されているとはいえません.電界放出現象を解明するとともに,デバイスへ応用する研究を進めています.